2月24日(日)、雪がちらつく京都で、(財)京都市景観・まちづくりセンター10周年記念事業、シンポジウム『個から始まるまち育て―まちの縁側で卵がかえる』が開かれた。会場には、若者からお年寄りまで多様な人々の熱気が終始充満していた。
小生の基調講演幻燈会、丹羽國子さんの「クニハウス」を始めとする現場からの報告。さらに、「縁側談義」。亭主は乾亨氏。客人は水無瀬文子さん(とねりこの家)、横山映子さん(かたりば朋)、振本ありささん(アリサハウスミュージアム)、絹川雅則氏(景観・まちづくりセンター評議員)。
まちの縁側という居場所づくりをめぐって、複数の声が交響する世界がひろがり、京都のまちに新しいまちの生命が孕みはじめる予感が会場に流れた。参加者の生の声の響きあいに添えて、その日にわかに参加した澤田好宏さんによる真赤な色の「カンレキ・ギター」の音色が、参加者間に主題に向けてゆるやかなイメージをわかちあう絶妙な雰囲気をかもした。小生の幻燈会ナレーションは彼の演奏に助けられ、流れの中でいつものハイスピード講談調ではなく、ユッタリ語りかけ調に進めることができた。深謝。
突然、終了間際に、コーディネーターの乾氏から最後のまとめの発言を求められた。小生はうろたえながらも、これからのまちの縁側のキーワード4点を提起した。
(1)退職金はたいてまちの縁側をつくるスーパー・ヒーローのやり方(丹羽さん、水無瀬さん)、町内会ぐるみのやり方(横山さん)、自分の持ち家を地域に開くやり方(振本さん)、空いている社宅・独身寮のエンガワ活用による企業の社会貢献(絹川さん)、等々
―まちの縁側実現手法は多様である。
(2)のんびりネットワークの人の輪をひろげながら、モノ・ヒト・コト・オトが響きあうホットする居場所、開かれたたまり場
―ヒトありきの居場所づくり
(3)シンプルな思いから始めよう「こんな居場所があったらいいナ」と。
―行政は高齢者・子ども・福祉・環境・まちづくりなど縦割りであるが、市民発まちの縁側は横つながり、「おでん」のような混ざりあいのおいしさを演出できる
(4)サポートの多様さを引き出す運営の創意工夫に妙味を見出す。
―ご近所の力、現物提供、助成金活用、行政の資金活用等々
いつものように頭韻をふんでみると「た・の・し・さ」
まちの縁側で「楽しさ」「面白さ」が大切なのは二重の意味がある。
第1に、出会いとふれあいの楽しさ、異質なものの交流・協働による驚き・感動は「人間性」を育むことにつながる。
第2に、人のために自分の力をだすことの楽しさ、やれることをやれる時にやれる場で自分の力を他者にうけわたす楽しさは、「新しい公共」を育むことにつながる。
「人間性」育みと「新しい公共」を孕む、「くらしの景観まちづくり」としての「まちの縁側」の必要性と可能性への多様な思いがわかちあわれるうちに閉会となった。
感動的気分が、今もまだカラダの中に漂っている。