
1月15日(月)17時~20時、建築学会の建築会館ホールで、「西山夘三の計画学」のシンポジウムが開かれた。
住田昌二+西山夘三記念すまい・まちづくり文庫によって『西山夘三の住宅・都市論―その現代的検証』(日本経済評論社)が出版されたことを機に、この書物をめぐって論じられる場を、建築計画本委員会(布野修司委員長)が主催した。西山夘三という巨人の全貌理解と混迷する現代への方法論を期待する参加者で、会場は満員となった。
住田昌二、広原盛明、内田雄造の問題提起と、五十嵐太郎、中谷礼仁のコメントを交えて、布野によるリズミカルな司会進行のもとまたたく間に3時間がついえた。
僕は「西山夘三の計画学」の精髄をどうこれからに生かすかの視点から、議論を傾聴しつつ次の3点に気づいた。
1 「構想計画」を新しい状況のもとにブラッシュアップする 人口減少・住宅過剰時代の計画学は、住田先生ご指摘のように帰納的分析的よりも演繹的提案的でありたい。「「構想」のダイナミックスを住民との応答の中でどう動かしていくかという点に注目するなら、近年、有効視されている「ワークショップ」による「まちづくり」が、方法論的には「構想計画」と同じ系譜にある。」(同書p.80)
2 「住み方調査」から「フィールドワークショップ」へ 「構想計画」立案には、地域と住民の状況把握を身体的感覚と土着的感覚を重視したい。広原先生はブルデューの「ハビトゥス」の概念を引きつつ、西山夘三の大阪西九条育ちの下町性・庶民性の原風景が住み方調査成立の背景にあることを示された。内田先生も西山夘三はアレグザンダー・クラインの動線分析をこえて、住み方調査によって食寝分離や性別就寝といった住生活の価値を発見する方法をひらいたことを強調された。その現代的展開は状況をブレークしていく創発的実践を伴なったアクション・リサーチではないだろうか。さらにいえば、多様なステークホルダーと共にくらしの現場の「タンケン・ハッケン・ホットケン」をしつつ、対話と協働によって共感をよぶ方向感・意味に赴く「フィールドワークショップ」は、「住み方調査」の創造的適用である。「構想計画」づくりの「フィールドワークショップ」を展開していきたい。
3 「小さな物語」づくりの計画学
西山夘三は、戦前・戦後の過酷な時代の流れの中で、歴史の底流のウズを起こす「大きな物語」づくりの野望にみちていた。これからは「大きな物語」をこえて、住宅・建築を通して生活と社会を変えようとする無数の多様な「小さな物語」(住田)を紡ぎつづける、そのことを生き方のデザインとするスピリットを次代に継承・発展させていきたい。