5月20日(日)、加納まちづくり会の平成19年度総会の記念講演会に招かれ、幻燈会をした。加納はJR岐阜駅南にあり、関ヶ原の戦いの直後、徳川家康の命によって加納城が築かれたところ。昭和15年岐阜市と合併。和傘づくりの有名なところ。はじめてここを訪れた今年3月末のある日の午後、この町のタンケンをした時に撮った映像約150枚を編集して約2時間近く語った。
加納城本丸のあった魅力的な広場にも足が届かなかった位、中途半端な「街の宝を活かすまちづくり」の発表であったが、集まられた地元住民の約50名の方々は、ことのほか喜こんでいただいた。中山道に残されているいくつもの名所旧跡的ポイントの歴史的説明は素通り、大正15年(1926年)に建てられた武田五一設計の旧加納町役場の空間的解説は少しふれながらも全体的に、外からやってきた「風の人」が瞬間に感じとったまちのタカラの数々を(勝手な)想像をめぐらして聞こえてくる遠い言葉を表現し、道端や庭先の小さな生命たちのつぶやきに耳を傾け、住民の生活感や自然感のにじむ見事な住まい方の魅力等を語りつづけた。
「なぎなた堀」と名づけられたところに象徴的に表れているように、中山道をはじめ広くない道路がゆるやかに曲りくねりながらつづく中、突然に電車が駆けぬけていく。赤いボディがこの町の時空のリズムを妙に織りなしている。踏切りに近いある秋葉神社は赤く塗られたスチールの門扉でよそわれている。大正時代か昭和の初めごろに建てられたおシャレなタイルばりの家の妻側に赤い文字の「タバコ」。庭の垣根ごしに顔をのぞかせる赤い花。まちをヘイゲイしているネコがのっている真赤な車・・・。赤のリフレインが加納を特徴づけている。赤はまるでこの町全体の親密感とこの先どうなっていくのかのチョッピリ不安感の共存のしるしでもあるかのよう・・・。
不安といえば武田五一の役場は構造的にもたないが故につぶされる恐れが・・・(?) ぼくは、この建築のもつ非シンメトリーな遊び心のある品格正しい存在を、可能な限り技術的に補強し補強材が内に外に露出することが新旧の絶妙な混ざりあいの美しさを表現し、新しい状況のもとに再生させることを願う。加えて、この場を創造的な市民協働・交流の場として、加納のまちに暮らすことの価値を次世代に継承するホンマの文化発信の拠点として活用されることを願ってやまない
1.JR岐阜駅前からのびる清水川は人々を加納に誘う
2.駅前超高層と対比的な伝統的町並み
3.中山道沿いの端正なたたずまいのかつての商家
4.個性的表情を投げかける住まい
5.武田五一設計の旧加納町役場
6.まちの中に赤いラインを引く電車
7.鉄道の赤に同調する秋葉神社の門扉の赤
8.まちをヘイゲイするネコが居座る車の赤