7月15日(土)、地域問題研究所とまちの縁側育くみ隊の共催で「私からはじまるまち育て・出版記念講演会」を開いた。
市川市の「1%の向こうに見えるまちづくり」(市民活動支援制度)の講演者の寺沢和博さん(同市企画部ボランティア・NPO協働推進課主幹)にお会いしてビックリした。なんと7年前に、ぼくが千葉大にいる頃、市川市の市民協働のしくみ検討にかかわっていた時の担当者が寺沢さんであった。その時に提案した「まちの縁側構想」が実現し、その具体的展開のひとつのしくみに、納税者が選ぶ「市民活動団体支援制度」が実現したのだ。ハンガリーのシステムを報じるテレビ番組をヒントにしつつ「情報をつかむ鋭い能力」と、「アイデアを実現させる意志の力、行動力、トップダウンの力等々」が作動して、「時代の流れを先取りしたすばらしい取り組み」を寺沢さんは持続させてこられたのだ。
参加者の反応をアンケートからさらにすくいあげてみると、「市長提案もさることながら、寺沢氏が市民税1%ルールをここまで完成された努力による達成感が自信となってよく表れている」「このシステムによって、NPOがより責任を意識し、自組識が成長していくことを望むとともに、本当のカタチで地域づくりにNPOが欠かせない要素となると理想・・・」「行政から補助金のある地縁団体(町内会)と、財政基盤の弱いNPO etc.との相互協力のしくみができないか考えてみたいと思います」など、「とても大きなヒントをいただいた気がします」の意見が多かった。
寺沢さんの「市民活動支援のしくみ」の話をうけて、ぼくは今ひとつ市民活動活性化のために大切な「人と人をつなぐ活動」それを担う「エンギニア」の話を盛りこんだ『私からはじまるまち育て―<つながり>のデザイン10の極意』(風媒社)出版記念幻燈会をした。当日プログラムは5本。
最初に、秋津コミュニティの岸裕司さんの取り組み。「丸太のヤグラや柱は、自然にやわらかくかつ力強くとけこんでくれる原初的なシンボルとして“オヤジ”みたいな存在だなあ」と思わせる映像のプレゼンテイション。
次いで、戸枝陽基さんの「ふわり」による「なちゅ」の様相。
3番目に、吉田一平さんらによる長久手町のグループホームと託児所の絶妙な共存のしかけは、幼老が共に生きる力を瞬間にはずませている現場の紹介。
4番目に、一宮市宮前三八市広場づくりにおける都市の記憶をよびさますカタチづくりにみる「エンガワ・デザイン」の成果。
最後に、入居後20年たったコーポラティブ住宅ユーコート。「ユーコートですごした子どもたちの声がとても印象的でした。つながりの世界、“エン”の世界のすばらしさを改めて感じられ、幸せな時間でした。・・・今の住まいは公団のコンクリート・ジャングルですが、そこにみえない人のつながりという“つた”をからめて“有機”の世界をつくりたい!」の反応には眼をみはるような触発される思いがつまっている。
コミュニティとエコロジーを交差させる状況づくりが、これからの住まい・まち育てに待たれていることを強調したが、立体緑化が不可能な場合でも、「人のつながりのつた」を育むことで有機の世界は生成可能だという言い方には深い感動を覚えた。
寺沢さん、スバラシイ反応を下さったご参加のみなさん、ありがとうございました。市民と行政、人と人のつながりの多様な“つた”を育む「勇気」は、ヒト・モノ・コト・イノチの循環する「有機」の世界の育みをもたらすであろう。