住民参加で希望にみちた地域の新しい風景創造につながる団地づくりをURは果たしてやっているであろうか。URは公団時代以来過去にいろいろな優れた実績をあげているが、最近特筆すべき団地を生み出した。住民参加方式で見事に建替えられた東京都杉並区にあるUR賃貸荻窪団地である。既存の低層住宅市街地に包まれ、善福寺川に寄り添うこの団地は、都市計画的に周辺との連携をたくみに行い(このプロジェクトのその方面の問題に力を尽くされた内田雄造さんは、惜しくも先日天国に召された。合掌。)、全て4階建ての人間的スケールである。住民参加のワークショップで設計計画の議論をすすめることに、小生は総合コーディネーターとしてかかわっていたが、みんなで考えた団地建替えのテーマは「記憶をつなぎ、人と自然がめぐりあうまちへ」である。(図)まるで東北でのふるさと再生居住地創造のテーマではないか。
さらに全体配置計画をすすめる上で目指したことは、
・地域に開かれた安全で災害に強いまちづくり
・団地の記憶を継承するまちづくり
・豊かな自然と共生するまちづくり
・周辺と調和し交流を育むまちづくり
・地域の新陳代謝を促すまちづくり
・多世代が安心して快適に暮らせる住まいづくり
であった。これらは全て具体的カタチとなって今までの賃貸住宅団地になかったオシャレな心地よい集住空間を生み出した。こんな実力のあるUR及びそれを支える設計技術集団を震災復興の担い手として是非生かしたい。
図 荻窪団地建替え計画にあたっての周辺とのかかわり
1)「シャレール荻窪」が新しい団地名
2)建替え前の団地の弓なりの道をそのまま残した
3)4階建て、411戸で容積率99%という高密快適配置計画
4)南北に風の道が通っている
5)同
6)風の道の南の端は、周辺住宅地と開放的につながっている
7)開かれたきもちのいいホールのある住棟入り口
8)同 夕景
9)同 足元空間の歩路では蓄電された太陽エネルギーが発光している
10)1階住戸は全て専用出入口と庭がある
11)18mの間口のある庭つきの家
12)メゾネット空間は、個性的表情を生む
13)インナーコート(部屋と部屋の間の庭)からは晴れた日には富士山が見える―善福寺川沿いの桜並木のヴィスタ・ポイントにも恵まれている
14)囲まれた中庭の樹木に、元々のものが生かされた
15)玄関に明かりが灯ると廊下にハンナリと光が・・・
16)両方の棟から生活表情が中庭ににじむ
17)Bブロックのサインもかわいい
18)元の梅の木が中庭に季節感を届けている
19)風の道にはり出したデッキのある集会所
20)右側の自転車置き場もやさしい表情