京・まち・ねっと研究会設立記念講演会に招かれた。
石本幸良さんが、30年あまり勤めたコンサルタント会社を退職し、「引退」ではなく、新しい「出発」への記念の日であった。
彼が京都大学入学以来の「40年間をふり返り、これからのまちづくりプランナーとしてのミッションを構築したい」の思い入れをもって企画された会。
ぼくは、幻燈会で祝福のプレゼンテーション。
『「コミュニティのビタミン」でつながりの創発へ』のタイトル。
この日はじめて「コミュニティ・ビタミン」のキーワードを提起したのは、次のような意味合いから。
★コミュニティのビタミンとは?===================
3.11以降「絆」や「コミュニティ」が大切だといわれながらも、地域住民の切実なつぶやきや願いを踏みにじるような頑なな行政の態度が目立ち、その融通のきかぬさまを変える即効性のある「栄養剤」のようなものはないのだろうか?
人間の身体にはビタミンがなければ生命活動の維持ができないように、コミュニティが活き活きとした活動を開始・維持・育成するための触媒となる要素が必要だ-それを「コミュニティのビタミン」を呼ぼう。地域住民や行政組織等の異質なものの間をゆるやかに結ぶ、不可欠な多様な「コミュニティ・ビタミン」を探求したい。
「コミュニティのビタミン」を考えることが、
そのまま人間も地域も安心自立共生するこれからの人育ち・まち育て・まちづくりのイメージにほかならない。
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プログラムは4部構成
1.<時をつなぎ>ひともまちも育みつづける
-絵本『ビロンギング』(ジェニー・ベイカー作,英)
2.<縁が輪>をなす居場所づくり
-名古屋のまちの縁側GOGO(NPO法人まちの縁側育くみ隊)
-まちの縁側5000ヶ所をめざす(長野ボランティアセンター)
3.<記憶><アート><楽しさ>でまちの育み
-繊維業衰退で荒廃した都心地区再生
(名古屋市錦二丁目長者町地区)
4.<レジリエンス(しなやかな回復)>による<ふるさと>再生
-行政との対立を越える<関節はずし>は可能か
※< >は「コミュニティ・ビタミン」
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ところでこの日の幻燈会は、ギター演奏付き。演奏は澤田好宏さん(ケメコはうす代表,京都産業大学講師)。これまでに2、3度コラボレーションしたことがあったが、久々の協演。
打合せやリハーサルするゆとりが全くないままに、いきなり本番。動物的にカンのいい澤田さんは、小生の語りに耳を傾け映像をみやりながら絶妙なアドリブ演奏。
ギターと語りのポリオフォニックな対話がつづく。音楽と語りが相互に時には挑発しあい、時にはハモりあい・・・。やがて、東北仙台荒浜の下りは、ギターに加えてハモニカで「ふるさと」のメロディが流れると、ぼくは思わず感きわまる。
「延藤は心臓発作をおこしたのか?」と一瞬その場の人々は息をのむ。
「なるようになる。なるようにしかならぬ。」
4本目の荒浜が終わった時、1時間30分が経過していた。おのずから会場に明かりがつけられようとした瞬間、顔中(汗か涙かわからない)水だらけのぼくはそれを制止。「澤田さんへのギターへのアンコールを」といいつつ、一応(アンコールとして)用意していたユーコート物語に移行。
会場は予期せぬ成りゆきにいっそう奮い立った(?)のか、あるいは無理やり押しつけられた(?)空気感が漂ったのか・・・。
入居後25年にして、ユーコート内と近所に、そこで育った若者たちが子連れで合計10世帯も帰ってくるというマンションをふるさとにしたドラマの結びとともに幻燈会はようやくアップ。何と始まってから2時間も経過していた。途中休みなく、ぼくもしゃべりつづけたが、澤田さんもギターを弾きつづけた!ぼくがギターの音色からインスピレーションをもらって気持ちよく語りつづけることが出来たのは、何といっても澤田さんの素晴らしい表現力であった。
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音楽と語りの対話、そして加えて2台のプロジェクタから映し出される映像・・・視聴者の熱意と共感が寄り添った2時間ぶっとおしのこの多重表現世界の冒険は、この日スタートをきった「京・まち・ねっと研究会」と石本幸良さんへの熱い友情と今後の持続的支援の証でもあった。
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多重表現世界とそれへの共感が滲む会場には、石本幸良さんへの心からのプレゼントとして、次のようなキーワードが浮かびあがってきた。
きょうの一期一会を大切に
まことのここちよさとはネコのような自由感覚
ちがう価値観のわかちあい
ねっしんさとパッションは人一倍
トラブルをエネルギーに変える
頭文字をすくいあげてみると・・・
「京・まち・ねっと」
「京・まち・ねっと」はこのコンセプトで育まれてほしい。
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ところで、会場は東山区七条の道沿い1階のコンビニ。その2階にある集酉楽サカタニ。酒店を経営しつつ、イベント会場をあわせもつ場所。
サカタニはこの地で約100年近く酒屋を営んでいる。
酒谷兄弟(79才、63才)は、配達に回ったりする中で、住民が高齢化し、独り暮らしのお年寄りも年々増えていくことをみて「みんなが集まり、おしゃべりしながら食事する機会を作れないか」と。
3年前から毎月第三日曜日には「朝粥食べておシャベリ会」を開いている。
何と見事な「縁が輪」というコミュニティのビタミンではないか。ひととまちを内側から元気にする試みが行われていることにいたく感心して会場を後にした。
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その日のアンケートが後日石本さんから送られてきた。
「音楽とBGMに、まさに絵本のように写真をめぐりながら、お話をきかせて頂く時間は初めてでした。とても心に伝わるものがありました」等の共感の声。
「コミュニティ・ビタミン」への反応をすくいあげてみると、
「ビタミン≒人がまちづくりを楽しむきっかけ、まちのことを考えるきっかけ」
「ビタミンA=Artをきっかけに、ワクワク、楽しさをひきだしていくこと」
「その地域に細やかに、少しずつでもとても重要なものであるという点で、ビタミンという言葉がぴったりだ」
等々。確かな手応えあり!